前回の予告と違う内容になります。なぜなら先日滋賀県教育委員会が公表している去年の学力検査問題(入試問題)の平均点と各問の正答率を見たからです。

 

以前、「公立高校の入試改革①」で書いたように、昔の奈良県と滋賀県は出題傾向がよく似ていました。そして4年前(2015年3月)から滋賀県がいわゆる新傾向問題を本格的に出題したので、今年(2019年3月)から変わる奈良県もその問題が参考になるのではと考えています。

 

「4年前から」ということは新しい出題がわかってから中学を3年間過ごした子が去年(2018年3月)受けたことになります。ですので、去年の子は「思考力」「判断力」「表現力」といった問題にある程度対応ができていないとおかしいということになります。

 

以下の、上のリンク先が滋賀県教育委員会が公表している平成30年度の問題があるページ、下のリンク先が同じく結果に関する考察で、下の方に平均点と正答率が載っています。

 

http://www.pref.shiga.lg.jp/edu/nyushi/koukou/ma05/index.html

http://www.pref.shiga.lg.jp/edu/nyushi/files/h30nyuushimatome.pdf

 

まず数学を見ると、典型的な新傾向問題が大問2と3ですが、それぞれの正答率は順に14.3%・17.8%・45.9%・6.8%・54.4%・2.0%・12.1%で、平均は21.9%。

これらの問題の平均得点が42点中7.98点(得点率19.0%)なのに対し、全体の平均点は40.6点。

 

次に、国語の文章記述の正答率はそれぞれ31.9%・18.6%・23.5%・8.8%、作文が20.1%で、平均は20.6%。

これらの問題の平均得点が49点中10.12点(得点率20.7%)なのに対し、全体の平均点は58.6点。

 

社会の文章記述は4.1%・11.5%・4.1%・6.2%・6.4%・29.2%・13.8%・10.7%・43.0%・27.0%で、平均は15.6%。

これらの問題の平均得点が59点中10.0点(得点率16.9%)なのに対し、全体の平均点は46.2点。

 

理科の文章記述は21.9%・3.8%・57.5%・13.8%・2.6%・26.7%・39.6%・71.7%で、平均は29.7%。

これらの問題の平均得点が47点中10.88点(得点率23.1%)なのに対し、全体の平均点は41.7点。

 

英語はリスニングの英問英答が22.3%・17.6%、会話文の応答英作9.6%・29.8%、スピーチの穴埋め英作29.4%、自由英作9.7%で、平均は19.7%です。

これらの問題の平均得点が33点中5.27点(得点率16.0%)なのに対し、全体の平均点は42.9点。

 

また他の正答率を見ても明らかですが、受験生は記号や短答問題で点数を稼いでいます。つまり滋賀県では3年かけても「思考力」や「表現力」は育っておらず、結局以前とほとんど変わっていないということがわかります。そして、これも以前のブログに書きましたが、中上位校は新傾向問題がどこまで解けるかが合否を決め、下位校はそもそも解けないので点数がとんでもなく低くなり、結果内申で決まるということが明らかになりました。

 

別の見方をすれば、「思考力」や「表現力」を問う問題に難しい問題が多く、その他の問題に簡単な問題が多いという特徴もあります。これは「思考力」や「表現力」に関しては高度な能力を求めていて、学力の高い一部の生徒を対象にしており、学力の低い生徒に対しては他の簡単な問題で点数を取らせているようにも見えます。もっと言えば多くの生徒に対して「できなくていいよ。」と言っているようにも思えます。もし教育委員会が「3年かけて育ったのであればこれくらいはできるだろう」と思って出したのであれば、この結果は明らかに教育の失敗であり、一部の高学力の生徒用に出したのであれば、国は学力の低い子を切り捨てているということになります。これからの時代に「思考力」や「表現力」が必要だと言っているのに、そうした問題が解けなくてもいい結果になっているからです。ただ個人的にはそこまで難しくはない問題も多くあったと思えるので、もう少し正答率が高くてもよかったのではないかとも思います。やはり3年間では「思考力」や「表現力」は育てられないということでしょうか。

 

おそらく奈良県も同様のことが起こるでしょう。1年目であればなおさらです。そしてそれに対する対策も大事なのですが、それより問題なのは滋賀県の中学校は何をしてきたのかということです。いや、何もできなかったんだろうなということです。

 

何度も書いていますが、思考力や表現力は知識の上に成り立つものであるのに、どの教科も教える内容が多すぎるので、そこまで手が回らないのが現状だと思います。だからこれは学校に責任があるのではなく、現状をわかっていない出題者である教育委員会とそもそものカリキュラムを作っている文部科学省に原因があるとしか思えません。もっと言えば、教育委員会は文科省の言われた通りにしているだけでしょうから、文科省が各教科のカリキュラムを見直さない限り、いくら「生徒の個性を…」と訴えたところでいつまでたっても何も変わることはありません。加えて英語がオールイングリッシュになり、道徳が必修教科になり、プログラミングもいずれ必修になるでしょう。こうした流れは生徒と学校の負担だけを重たくさせる教育の暗黒時代の始まりのような気もします。

 

 

次回は私が教師ならこんなテストにする、といった内容です。

 

最後までご覧頂きありがとうございました。